通信費は「乗り換えれば安くなる」と言われますが、実際に動く人は多くありません。理由のひとつは、比べ方がわからないことです。広告の月額は安く見えても、機器のレンタル料、導入価格の終了、解約金が乗ると総額は変わります。
ここで使えるのがブロードバンド・ラベルです。食品の栄養成分表示をまねた制度で、インターネットの全プランに表示義務があります。総額を比べるための土台がすでに用意されています。
もうひとつ知っておきたいのがSIMロック解除のルールです。条件を満たせば追加料金なしで解除され、事業者は2営業日以内に対応する決まりになっています。端末を買い替えずに乗り換えられるということです。
この記事では、この2つの制度を軸に、契約の見直し方を整理します。
- ブロードバンド・ラベルは全プランで表示義務。導入価格とデータ上限も開示対象
- ラベルは販売の場すべてで確認できる。出していない業者はFCCに苦情を出せる
- SIMロック解除は追加料金なし。事業者は2営業日以内に対応する決まり
- プリペイドは開通から1年以内に解除可能
- 低所得世帯は月$9.25の割引(Lifeline)。部族地域は最大$34.25
1. ブロードバンド・ラベルで総額を比べる
インターネット事業者は、単独で販売するブロードバンドのプランごとにラベルを用意する義務があります。固定回線もモバイルブロードバンドも対象です。
ラベルは販売の場すべてで確認できます。オンラインでも店頭でもです。FDAの栄養成分表示をモデルにしており、プランを比較して選ぶための道具として設計されています。
ラベルに載っている情報
FCCによれば、ラベルは次の内容を開示しなければなりません。
- 料金
- 導入価格(introductory rate)
- データ上限
- 速度
- ネットワーク管理方針とプライバシーポリシーへのリンク
用語がわからない場合のために、FCCは用語集も用意しています(スペイン語版もあります)。ラベルの見本(家庭用とモバイル用)もPDFで公開されています。
比べるときの考え方
ラベルがあることで、次の比較ができます。
- 導入価格が切れた後の金額を見る。広告の数字は多くが期間限定です
- 追加料金を足す。機器のレンタル料が毎月乗ります
- 解約金を確認する。期間の途中で乗り換えるときに効きます
- データ上限と速度を、自分の使い方と突き合わせる。上限を超えたときの扱いも見ます
月額だけで比べないことです。「1年目は安いが2年目から倍」という構造は珍しくありません。
※ 2026年7月のFCCの会合で、ラベルを読みやすくし事業者の負担を減らす改正が承認されました。表示項目は今後変わる可能性があります。
機器のレンタル料は積み上がる
モデムやルーターのレンタル料は、月額が小さく見えても長期では大きくなります。対応機種を自分で買えば、以後のレンタル料はかかりません。契約前に、持ち込みが可能かと対応機種を確認してください。
2. SIMロック解除のルール
乗り換えの障害になるのが端末のロックです。ここには業界の共通ルールがあります。
何が決まっているか
CTIA(業界団体)の「Consumer Code for Wireless Service」に、6つの基準が組み込まれています。全国規模の事業者はすべて参加しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ポストペイド | 契約・端末分割の完了、または解約金の支払い後、要求すれば解除(良好な状態の顧客・元顧客・個人所有者が対象) |
| プリペイド | 開通から1年以内に解除(合理的な時間・支払い・利用の要件に沿って) |
| 手数料 | 解除の資格がある端末について、既存・元顧客から追加料金を取らない |
| 対応期限 | 要求から2営業日以内に、解除するか、メーカーへの依頼を開始するか、資格がない理由を説明する |
| 通知 | 解除できる状態になったら通知するか、自動で遠隔解除する |
| 派遣軍人 | 派遣書類の提示で解除 |
対象は携帯電話とタブレットです。ロックは物理SIMにもeSIMにも適用されます。
知っておきたい前提
- 全額払って買った端末でも、盗難や不正防止のため60日程度ロックされることがあります
- 残債がある、契約期間中といった場合は、解除されないことがあります
- ロック解除と、他社で使えるかは別の話です。事業者ごとに周波数や通信方式が違うため、解除しても技術的に使えないことがあります
- 中古端末を買うときは、ロックされているかを必ず確認してください。「unlocked」と明示されていない限り、ロックされていると考えるのが安全です
3. MVNOという選択肢
大手の回線を借りて運営する事業者です。今回確認できた2社の料金です。
| 事業者 | プラン | 料金 |
|---|---|---|
| Visible(Verizon回線) | Visible | $25/月(年額$275) |
| Visible+ | $35/月(年額$375) | |
| Visible+ Pro | $45/月 | |
| US Mobile | Unlimited Starter | 初年度$199/年、更新時$270/年 |
| Unlimited Premium | 初年度$299/年、更新時$390/年 | |
| Unlimited Flex | $210/年 |
US Mobileの初年度価格と更新価格の差に注目してください。Starterは$199から$270へ、Premiumは$299から$390へ上がります。
これはインターネットの「導入価格が切れた後の値上がり」と同じ構造です。携帯プランでも、2年目以降の金額で比べてください。
Visibleにはプロモコードによる割引がありますが、コードが失効すれば通常価格に戻ります。プロモ価格を基準に選ばないことです。
※ Mint MobileとTelloの2026年の料金は、今回の調査では取得できませんでした。乗り換え前に各社の公式サイトでご確認ください。MVNOへの乗り換え手順そのものはMVNOへの乗り換えで扱っています。
4. Lifeline(低所得世帯向け)
連邦の割引制度です。電話、インターネット、またはセット契約の月額が割り引かれます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 割引額 | 月$9.25まで |
| 部族地域 | 月$34.25まで(標準$9.25+上乗せ$25) |
| 所得要件 | 世帯所得が連邦貧困線の135%以下 |
| または対象プログラム | SNAP、Medicaid、連邦住宅支援、SSI、退役軍人年金、一部の部族支援プログラム |
| 制限 | 1世帯につき1回線。有線か無線のどちらかに適用 |
申請はオンライン(National Verifier)、郵送、または参加事業者経由です。テキサス州とオレゴン州は州独自の手続きがあります。問い合わせは 1-800-234-9473。
毎年の再認証が必要です。怠ると登録が解除されます。所得が増えた、対象プログラムから外れた、同世帯の別の人がLifelineを使い始めた、といった場合は資格を失うので、速やかに事業者へ連絡してください。
また、月額を徴収しないLifelineサービスの場合、30日に1回は使う必要があります。
DVや人身取引の被害者は、Safe Connections Actにより最大6か月の緊急Lifeline支援を受けられる可能性があります。同法により、加害者と共有している電話回線の分離もしやすくなっています。
※ かつてあったACP(Affordable Connectivity Program)の現在の状況は、今回の調査では確認できませんでした。FCCの公式サイトでご確認ください。
5. おかしいと思ったら
次の場合、FCCに無料で苦情を申し立てられます。
- 事業者がブロードバンド・ラベルを表示していない
- ラベルの料金やプラン内容が事実と違う
窓口はFCCのConsumer Complaint Center(consumercomplaints.fcc.gov)です。携帯やインターネットの契約トラブル全般も受け付けています。
ロック解除については、参加事業者でない場合もあるため、まず事業者に直接方針を確認してください。
6. 渡米直後につまずくところ
アメリカに来たばかりだと、信用履歴がないために契約で不利になることがあります。
- ポストペイドは信用調査を伴うことが多いです。FCCも、ポストペイドは新規開設時に信用調査を求めることが多いと説明しています
- プリペイドは信用調査が不要なのが一般的です。渡米直後はここから始めるのが現実的です
- ただしプリペイドは端末のロック期間が長くなる傾向があります。割引端末や無料端末が付く代わりに、1年程度ロックされることがあります
つまり、最初にプリペイドで安く始め、信用履歴ができてから乗り換えるという道筋になります。そのとき端末のロックが解けているかが分かれ目になるので、契約時にロック期間を確認しておいてください。
まとめ:今日できる3つ
- 今の契約のブロードバンド・ラベルを見る。導入価格がいつ切れるか、機器レンタル料がいくらかを確認します
- 端末がロックされているか事業者に聞く。解除の資格があれば追加料金なし、2営業日以内に対応されるはずです
- 所得要件に当てはまるならLifelineを申請する。月$9.25、部族地域なら最大$34.25です
MVNOへの具体的な乗り換え手順はMVNOへの乗り換え、インターネット代の交渉はインターネット代を下げるにまとめています。
※ 本記事は2026年9月22日時点で確認できた公開情報(FCC、各社公式サイト)にもとづく整理です。料金とプランは変更されます。FCCのラベル制度は2026年7月に改正が承認されており、表示項目が変わる可能性があります。契約前に各社の公式サイトで最新の条件をご確認ください。Mint MobileとTelloの料金、ACPの現状は今回の調査では確認できませんでした。推測では補っていません。
出典
- FCC:Broadband Consumer Labels:全プランでの表示義務、開示項目(料金・導入価格・データ上限・速度)、販売の場での確認、用語集と見本、2026年7月の改正承認、苦情の申立先
- FCC:Cell Phone Unlocking:CTIAの6基準、追加料金なし、2営業日以内の対応、プリペイドは1年以内、物理SIMとeSIMの両方、全額購入でも60日程度のロック、ポストペイドの信用調査
- FCC:Lifeline:月$9.25、部族地域$34.25、所得135%以下、対象プログラム、1世帯1回線、年次再認証、30日ルール、Safe Connections Act
- Visible:料金プラン(2026年9月22日時点)
- US Mobile:料金プラン(2026年9月22日時点):初年度価格と更新価格