SSA(社会保障庁)は、2027年のCOLA(Cost-of-Living Adjustment、物価に合わせた給付の増額)を3.6%と発表しました。2026年の2.8%より大きな増額です。ただし、Medicare Part Bの保険料も上がる見込みなので、手取りの増え方はもう少し小さくなります。
この記事では、SSAの公表値をもとに、受給中の人、これから受給する人、働きながら受給する人に関係する数字を整理します。受給開始の年齢そのものの選び方は「社会保障の受給開始時期戦略」で詳しく説明しています。
- 退職者の平均月額は$2,095から$2,170へ、約$75の増額(2027年1月の支払いから)
- まだ請求していない人にも、62歳以降のCOLAは計算上反映される。待つ間に損をするわけではない
- 満額受給開始年齢(FRA)前に働きながら受給するときの収入の上限は、$25,560に上がる
- Part Bの2027年の保険料は未発表。予測の$209.50なら、平均的な人の手取りの増加は月約$68
1. 給付はいくら増えるか
COLAは、CPI-W(都市部の賃金労働者の消費者物価指数)の、2025年第3四半期から2026年第3四半期までの上昇率で決まります。Social Securityの増額は2027年1月の支払いから、SSI(補足的保障所得)の増額は2026年12月31日から反映されます。
| 区分(平均月額の推計) | 増額前 | 増額後 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 退職者全体 | $2,095 | $2,170 | $75 |
| 高齢の夫婦(ともに受給) | $3,238 | $3,355 | $117 |
| 高齢の遺族(単身) | $1,936 | $2,005 | $69 |
| 障害給付の受給者全体 | $1,642 | $1,701 | $59 |
※ FRAで退職した人の最高月額は$4,152から$4,188に、SSIの連邦基準額は個人$994から$1,029に、夫婦$1,491から$1,544になります。自分の金額は、my Social Securityまたは届く通知で確認してください。
2. 受給開始時期との関係
- すでに受給中の人:今の給付額に3.6%が上乗せされます。
- まだ請求していない62歳以上の人:現金は出ませんが、62歳以降のCOLAは給付の計算に反映されます。SSAの説明でも、受給していなくても62歳以降の各年のCOLAが適用されるとされています。「COLAが高い年に請求していないと損」ということはありません。
- 62歳未満の人:今回のCOLAは、給付の計算に直接は使われません。
- 繰り下げの増額は別の仕組み:FRAから70歳まで待つと増える分(1943年以降生まれは年8%)は、COLAとは別に加わります。
62歳開始と70歳開始の比率は、COLAでは変わりません。両方に同じ率がかかるためです。いつ始めるかは、今年のCOLAの高さではなく、健康状態、ほかの収入、配偶者の給付で考えるのが基本です。
なお、繰り下げる場合でも、Medicareは65歳になる時期に申し込む必要があります。遅れると、Part Bの保険料が高くなることがあります。詳しくは「Medicare Part Bの保険料と負担を減らす制度」を参照してください。
3. 働きながら受給する人:収入テスト
FRAより前に受給しながら働くと、収入が上限を超えた分に応じて、給付の一部が差し止められます。
| 対象 | 2026年 | 2027年 | 超えたときの扱い |
|---|---|---|---|
| 1年を通してFRA未満 | $24,480 | $25,560 | $2につき$1を差し止め |
| FRAに達する年(達する月の前月までの収入) | $65,160 | $67,920 | $3につき$1を差し止め |
| FRAに達した月以降 | 上限なし | 上限なし | 差し止めなし |
- 数えるのは給与と自営業の純利益です。ボーナス、歩合、有給の買い取りも入ります。年金、投資収入、利息は入りません。
- 差し止められた分は消えるわけではありません。FRAに達すると、その月数を考慮して給付額が計算し直されます。
- まだ請求していない人には関係しません。
- 受給を始めた年には、月単位で判定する特別なルールがあります。
- FRA前に米国外で働く場合は別のルールです。日本で働く予定がある人は、SSAの「Your Payments While You Are Outside the United States」を確認してください。
4. 働いている人:課税上限
Social Security税(給与の6.2%)がかかる年収の上限は、2026年の$184,500から、2027年は$192,300に上がります。上限を超える年収の人は、従業員負担だけで最大$483.60($7,800×6.2%)増えます。税率は変わりません。
Social Securityのクレジット1単位に必要な収入は、$1,890から$1,970になります。
5. 手取りはいくら増えるか:Part Bの保険料
Part Bの保険料を給付から天引きされている人は、その分を差し引いて考えます。
- 2026年のPart B保険料は月$202.90、年間の免責額は$283です。
- 2027年の額は、2026年11月1日時点でCMSが発表していません。2026年分は前年11月14日に発表されました。
- AARPなどの報道によると、2026年のTrustees Reportの予測は月$209.50($6.60増)、免責額$292です。確定値ではありません。
簡易試算:$75(平均の増額)−$6.60(予測の保険料の増額)=月約$68。給付額が平均的な人の目安で、所得税、Part D、Medigapなどは含みません。
hold harmless(振込額が減らないようにする仕組み)
Part Bの保険料が上がっても、Social Securityの振込額が前年より減らないようにするルールです。11月と12月に給付の資格があり、12月と1月の保険料を給付から天引きされている人が対象です。次の人には適用されません。
- その年に初めてPart Bに入る人
- IRMAA(高所得者の上乗せ保険料)を払っている人
- Medicaid(州)が保険料を負担している人
受給を繰り下げていてPart Bに入っている人は、給付からの天引きがないので、この条件を満たさず、保険料の値上がりをそのまま負担します。
6. これからやること
- 通知またはmy Social Securityで、2027年1月以降の給付額を確認する
- 11月ごろのCMSの発表で、Part Bの保険料を確認して手取りを計算し直す
- FRA前に働きながら受給する人は、2027年の収入の見込みを新しい上限と比べる
- 夫婦の人は、世帯の受給見込みをmy Social Securityで見直す
まとめ
- COLAは3.6%で、退職者の平均は月約$75の増額
- 請求前でも62歳以降のCOLAは反映されるので、COLAの高さを理由に急いで請求する必要はない
- 収入テストの上限は$25,560、FRAに達する年は$67,920
- 手取りはPart Bの保険料次第。予測どおりなら平均で月約$68の増加
※ 本記事は2026年11月1日時点で確認できた情報にもとづく整理です。Part Bの2027年の金額は予測で、CMSの発表で変わります。自分の給付額と受給のタイミングは、SSAのmy Social Securityや窓口(1-800-772-1213)で確認してください。
出典
- SSA:2027 COLA Fact Sheet:COLA、平均月額、収入テスト、課税上限、SSI
- SSA:Receiving Benefits While Working:数える収入、FRA後の計算し直し
- SSA:Annual Statistical Supplement(Appendix C):62歳以降のCOLAの扱い
- SSA:Delayed Retirement Credits:繰り下げの増額、65歳のMedicare
- SSA:Hold Harmless Provision:適用条件と例外(仕組みの説明。金額は当時のもの)
- CMS:2026年のMedicare Part A・Bの保険料と免責額
- AARP:2027年のPart B保険料の予測
- Money:2027年のCOLAの報道:2026年のCOLA 2.8%