秋は、勤務先の保険もACAマーケットプレイス(HealthCare.govなど)の保険も、来年のプランを選び直す季節です。2027年は、補助金の対象や自己負担の上限など、在米日本人にも関係する変更がいくつもあります。「なんとなく自動更新」は避けたい年です。
この記事では、2026年10月12日時点で確認できた情報をもとに、2027年に向けて押さえておきたい変更点と、見直しのチェックリストをまとめます。
- マーケットプレイスの申込期間は2026年11月1日〜2027年1月15日(州の取引所は日程が違うことがある)
- 2027年1月から、保険料の補助金の対象はグリーンカード保持者などに限られる。H-1B・L-1・Eなどの就労ビザの人と家族は対象外になる
- 補助金の「400%の崖」は続き、受け取りすぎた補助金は、2026年分から上限なしで全額返すことになった
- 2027年の自己負担上限は個人$12,000・家族$24,000。保険料と自己負担を合わせた年間の総額で比べ直す
1. 2027年に向けて押さえること
- マーケットプレイスの申込期間:HealthCare.govは2026年11月1日〜2027年1月15日です。12月15日までに申し込めば1月1日から、12月16日〜1月15日なら2月1日から保険が始まります。州が運営する取引所は日程が違うことがあり(たとえばアイダホは10月15日開始)、自分の州の日程を確認してください。
- 補助金の「崖」は続く:2021年から拡充されていた保険料の税額控除(補助金)は、2025年末で終わりました。2026年からは、所得が連邦貧困線(FPL)の400%を超えると補助金がゼロになります。延長の法案は下院を通りましたが、2026年10月12日時点で成立していません。
- 受け取りすぎた補助金は全額返す:補助金は所得の見込みで前払いされ、確定申告(Form 8962)で精算します。2026年分(2027年に申告)から、受け取りすぎた分を返すときの上限がなくなりました。所得を低く見積もりすぎると、全額を返すことになります。
- 自己負担上限(OOP Max):ACAの対象のプランの自己負担上限は、2026年の個人$10,600・家族$21,200から、2027年は個人$12,000・家族$24,000に上がります。
- HSA・HDHPの上限(2027年):HSAの拠出上限は個人$4,500・家族$9,000(55歳以上は+$1,000)。HDHPの最低免責額は個人$1,750・家族$3,500、HDHPの自己負担上限は個人$8,700・家族$17,400です。
- FSAの上限:Health FSAの上限は2026年が$3,400で、2027年の上限は2026年10月12日時点でIRSが発表していません。Dependent Care FSA(保育・介護)は、2026年から$7,500(夫婦別々に申告する場合は$3,750)です。
2. 在留資格による補助金の変更
2025年の税制法(OBBBA)により、2027年1月1日から、マーケットプレイスの保険料の補助金を受けられるのは、次の人に限られます。
- 米国市民
- グリーンカード(永住権)を持つ人
- キューバ・ハイチからの入国者の一部、ミクロネシア・マーシャル諸島・パラオ(COFA)の市民
そのため、H-1B・L-1・E・F-1などのビザの人と、その家族(H-4・L-2など)は、2027年から補助金の対象外になります。難民・亡命者・TPSの人なども対象外です。保険そのものには加入できますが、保険料は全額自己負担になります。
配偶者や子どもだけがマーケットプレイスの保険に入っている家庭は、来年の保険料が大きく上がる可能性があります。勤務先の保険に家族を追加できないか、早めに確認してください。申込画面で在留資格を入力すると、補助金の対象かどうかが表示されます。
3. 見直しチェックリスト
ネットワーク・薬
- かかりつけ医・専門医・よく行く病院が、来年もネットワークに入っているか
- 常用薬がフォーミュラリー(薬のリスト)に入っているか、自己負担の区分(ティア)が上がっていないか
- 事前承認が必要なサービスや薬が増えていないか
費用
- SBC(Summary of Benefits and Coverage)で、保険料・免責額・自己負担上限を横に並べて比べる
- 「保険料+自己負担」の年間の総額を、医療費が少ない年・ふつうの年・大きな治療がある年の3パターンで計算する
- 配偶者を追加するときの追加料金(spousal surcharge)があるか、人事に確認する
手続き
- マーケットプレイスの人は、所得が変わったらすぐに報告する
- 確定申告のときに、Form 8962で補助金を精算する
4. 勤務先の保険の場合
勤務先のオープンエンロールメントは、多くの会社で秋に2〜4週間ほど行われます。時期は会社によって違うので、人事からの案内を確認してください。プランの変更や家族の追加・削除ができる数少ない機会で、期限を過ぎると、結婚・出産などの特別な事情がない限り次のチャンスは1年後です。
今年使った医療費をEOB(保険金支払通知書)で確認してから、来年のプランと比べるのがおすすめです。HMO・PPO・HDHPの選び方は「健康保険プランの選び方」、HSAの使い方は「HSAの活用」で詳しく紹介しています。
5. マーケットプレイスの場合
CMS(連邦メディケア・メディケイドサービスセンター)は2026年9月22日、ブローカーが本人の同意なく申し込んだ不正な加入など、約31.5万件(76万人超)の加入を取り消すと発表しました。あわせて、本人確認の強化や、200以上の代理店・ブローカーへの契約終了の通知も行っています。報道によると、このほかに約41.9万件の加入が追加の確認の対象になります。
自分でHealthCare.govから申し込み、内容を把握している人は、過度に心配する必要はありません。次に当てはまる人は、HealthCare.govに自分でログインして加入状況を確認してください。
- 身に覚えのないプランの変更の通知が届いた
- 保険会社から、見慣れない明細や通知が届いた
- ブローカーを通して加入した
所得がFPLの400%前後の世帯は、補助金の崖と全額返済のルールがあるため、所得の見込みを慎重に見積もっておくと、確定申告で慌てずに済みます。
6. 事前承認で否認されたら
CMSのルール(CMS-0057-F)により、2026年1月から、Medicare Advantage、Medicaid・CHIP、連邦の取引所で販売されるマーケットプレイスのプランでは、事前承認の回答期限が緊急の場合72時間以内、通常は7日以内になり、否認するときは理由を示すことが求められています。勤務先の保険(特に自家保険型のプラン)は、このルールの対象外です。
否認されたら、まず否認の理由を書面で求め、保険会社への内部の不服申し立て(Internal Appeal)、それでも覆らなければ外部の審査(External Review)に進みます。請求書が来たときの対処は「入院の請求を安くする方法」を参照してください。
まとめ
- マーケットプレイスは11月1日〜1月15日。1月1日から使うなら12月15日までに申し込む
- 就労ビザ・駐在ビザの人と家族は、2027年から補助金の対象外。家族の保険の入り方を見直す
- 補助金の受け取りすぎは全額返済。所得の見込みは慎重に
- 自己負担上限は個人$12,000・家族$24,000に。年間の総額で比べ直す
- まずはネットワークと常用薬のチェックから始める
※ 本記事は2026年10月12日時点で確認できた情報にもとづく整理です。補助金や在留資格の扱いは、法律や規則の変更で変わることがあります。自分に当てはまるかは、HealthCare.gov(または州の取引所)、勤務先の人事、税の専門家に確認してください。
出典
- HealthCare.gov:申込期間:11月1日〜1月15日
- CMS:プレスリリース(2026年9月22日):加入の取り消し、ブローカーへの対応
- MPR News(2026年9月23日):約41.9万件の追加の確認
- healthinsurance.org:2027年のオープンエンロールメントの変更点:在留資格による補助金の対象、補助金の崖
- IRS:OBBBAの主な規定:補助金の返済の上限の撤廃
- Milliman:2027年のACAの自己負担上限:個人$12,000・家族$24,000
- IRS Rev. Proc. 2026-24:2027年のHSA・HDHPの上限
- CMS:事前承認のルール(CMS-0057-F)
- HealthCare.gov:不服申し立て