この秋は「暖房費がまた上がるらしい」という話題をよく見かけます。ただ、実際にどうなるかは、使っている燃料と住んでいる地域でかなり違います。
この記事では、米エネルギー情報局(EIA)が2026年10月6日に公表した2026-27年冬(11月〜3月)の見通しをもとに、燃料別・地域別の見込みと、今からできる備え、支払いが苦しいときの制度をまとめます。光熱費の基本的な節約方法は「光熱費削減(電気・ガス・水道)」で紹介しているので、この記事では冬の暖房に絞ります。
- 天然ガスとプロパンで暖房する世帯は、前の冬より支出が減る見込み(ガス-9%、プロパン-3%)
- 電気(+4%)と灯油(+21%)で暖房する世帯は、支出が増える見込み。西部は寒さの想定でガスも電気も増える
- サーモスタットは、起きている時間68〜70°F、寝ている間や外出中は7〜10°F下げるのが目安
- 支払いが苦しいときは、LIHEAP(光熱費の支援)や冬の供給停止の保護を確認する
1. 今年の冬の見通し(EIA)
EIAは、全国の冬の寒さは前の冬と過去10年の平均とほぼ同じと想定しています。そのうえで、燃料ごとの世帯あたりの支出を次のように見込んでいます。
全国(11月〜3月、前の冬との比較)
| 燃料 | 世帯あたりの支出 | 前冬比 | 燃料の価格 | 前冬比 |
|---|---|---|---|---|
| 天然ガス | $640 | -9% | $13.44/千立方フィート | -9% |
| 電気 | $1,196 | +4% | 18.23¢/kWh | +3% |
| プロパン | $1,246 | -3% | $2.52/ガロン | -2% |
| 灯油 | $2,115 | +21% | $5.26/ガロン | +34% |
※ それぞれの燃料で暖房する世帯の平均です。使う量が燃料ごとに違うため、燃料どうしの金額は単純に比べられません。プロパンは北東部・中西部・南部の平均です。
地域別(11月〜3月、前の冬との比較)
| 地域 | 天然ガス | 電気 |
|---|---|---|
| 北東部 | $879(-14%) | $1,637(-3%) |
| 中西部 | $613(-10%) | $1,380(+3%) |
| 南部 | $511(-15%) | $1,079(+3%) |
| 西部 | $590(+7%) | $1,151(+9%) |
- 西部は、ガスも電気も支出が増える見込みです。前の冬が暖かかったため、今年は寒さの指標(暖房度日)が前冬より25%多いと想定されています。
- 北東部は、逆に前の冬より暖かい想定で、電気の支出も下がる見込みです。
- 灯油で暖房する世帯は全体の約3%で、ほとんどが北東部です。灯油の価格は+34%の見込みですが、暖かめの想定で支出の増加は+21%にとどまります。東海岸の灯油・軽油の在庫は、冬の間も平年を20〜30%下回る見込みです。灯油の契約条件は業者ごとに違うので、複数の業者の価格と条件を比べてください。
EIAは、強いエルニーニョによって天候が想定と変わる可能性があるとも書いています。寒い冬になれば、どの燃料も支出は増えます。
※ エネルギー支援の団体NEADAは、2026年9月に全国平均の暖房費を$1,030(前年比+8.7%)と見込んでいます。計算の方法が違うため、EIAの燃料別の数字とは一致しません。
2. 暖房はいつから、何度に設定する?
- 米エネルギー省(DOE)が勧める設定は、家にいて起きている時間は68〜70°F(約20〜21℃)です。
- 寝ている間や外出中は、ふだんの設定から7〜10°F(約4〜5.5℃)下げるのが目安です。68°Fからなら58〜61°F(約14〜16℃)になります。
- 1日8時間、7〜10°F下げると、冷暖房費を年間で最大10%節約できるとDOEは説明しています。
暖房を入れる時期に決まりはありませんが、朝晩の室温が68°Fを下回るようになったら検討する、というのがひとつの目安です(DOEの基準ではなく、このサイトの目安です)。プログラムできるサーモスタットなら、時間ごとの設定を自動にできます。
3. 秋のうちにやること
- エアフィルター:ENERGY STARは、月に1回フィルターを点検し、汚れていれば掃除か交換することを勧めています。汚れたフィルターは暖房の効率を落とします。
- シーズン前の点検:暖房のシーズンが始まる前(秋)に、業者に点検してもらうことも勧められています。
- 断熱・すき間ふさぎ:家全体の省エネは「光熱費削減」で紹介しています。電力会社の無料のエネルギー診断も、冬の前に予約しておくと安心です。
4. 支払いを毎月ならすBudget Billing
多くの電力・ガス会社には、過去の使用量をもとに毎月ほぼ同じ額を払う「Budget Billing(Levelized Billing)」という仕組みがあります。
- 割引ではなく、支払いをならすだけです。冬に請求が跳ね上がるのを避けたい人に向いています。
- 実際の使用量とのずれは、定期的に見直されたり、年に1回精算されたりします。仕組みは会社によって違います。
- 申し込みは、契約している電力・ガス会社のサイトで「Budget Billing」「Levelized Billing」を探すのが早いです。
5. 払えないときの制度
LIHEAP(光熱費の支援)
- LIHEAP(Low Income Home Energy Assistance Program)は、所得の低い世帯の暖房費・冷房費を支援する連邦の制度です。2026会計年度の予算は約$40.5億で、すべて州に配られています。
- 所得の上限は、連邦貧困ガイドラインの150%か、州の中央値所得の60%のうち高いほうです。実際の基準は、その範囲で州ごとに決められています。申請の窓口は州ごとにあります。
- LIHEAPは連邦の「公的給付」にあたるため、対象は原則として米国市民と、グリーンカードを持つ人などの「適格外国人」です。H-1B・L-1・F-1などの一時的なビザの人は、原則として対象外です。世帯に米国市民の子どもがいる場合などは、州の窓口で確認してください。
※ 2027会計年度(2026年10月〜)の予算は、2026年10月12日時点で成立が確認できていません。
冬の供給停止の保護
冬の間、暖房に使う電気やガスを止めることを制限している州があります。
- イリノイ州:12月1日〜3月31日は、条件付きで暖房用の電気・ガスを止められません。気温が32°F(0℃)以下になる予報の日は、止めること自体が禁止です。冬の分割払いのプランもあります。
- マサチューセッツ州:11月15日〜3月15日は、支払いが難しく、所得が基準以下の世帯は、暖房を止められないよう保護されます。
- ミシガン州:Winter Protection Planに入り、1年分の見込み額の7%を毎月払うなどの条件を満たせば、11月1日〜3月31日は供給を止められません。
ほかの州でも、州の公益事業委員会(PUC)のサイトで冬の保護があるか確認できます。止められそうになったら、まず電力・ガス会社に連絡して、分割払いや支援の制度を相談しましょう。
6. 電気ヒーターは得か
1部屋だけ暖めたいときに、電気ヒーター(スペースヒーター)を考える人もいます。先に電気代を計算しておきましょう。
- よくある1,500Wのヒーターを、2026年7月の家庭用の電気料金の全国平均(1kWhあたり18.31¢)で使うと、1時間で約$0.27です。
- 1日8時間・30日使うと、月に約$66になります。
- 家全体の設定温度を下げて、使う部屋だけ補うなら得になる場合があります。何台も長時間使うと、かえって高くつくこともあります。
- 安全のため、燃えやすい物から3フィート(約90cm)以上離し、部屋を離れるときや寝るときは電源を切ってください。
まとめ
- 自分の家の暖房の燃料と地域で、今年の冬の見通しを確認する
- サーモスタットは起きている時間68〜70°F、寝ている間や外出中は7〜10°F下げる
- フィルターを月1回点検し、シーズン前に点検を受ける
- 冬の請求をならしたいならBudget Billingを使う
- 支払いが苦しくなりそうなら、LIHEAPと州の冬の保護を早めに確認する
※ 本記事は2026年10月12日時点で確認できた情報にもとづく整理です。見通しは天候で変わり、制度の条件も変わることがあるため、最新の情報は各公式サイトで確認してください。
出典
- EIA:Winter Fuels Outlook 2026-27(2026年10月6日):燃料別・地域別の見通し、暖房度日
- EIA:プレスリリース(2026年10月6日):灯油の世帯約3%、東海岸の在庫、北東部の暖かめの想定
- EIA:Electric Power Monthly:2026年7月の家庭用電気料金18.31¢
- NEADA(2026年9月14日):全国平均の暖房費$1,030
- DOE Energy Saver:Programmable Thermostats(2026年7月時点の保存版):68〜70°F、1日8時間7〜10°F下げて年最大10%
- ENERGY STAR:冷暖房のメンテナンス:フィルターの月1回の点検、シーズン前の点検
- American Public Power Association:LIHEAPの2026会計年度の予算
- ACF:LIHEAP:制度の概要と申請の窓口
- Illinois Legal Aid Online:イリノイ州の冬の保護
- Mass Legal Services:マサチューセッツ州の冬の保護
- Michigan Legislature:MCL 460.9r:ミシガン州のWinter Protection Plan
- CPSC:電気ヒーターの安全の注意